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泣きたいような、気持ちで向けた視線の先。
―――飯島海。
彼が、体育館倉庫の小さな窓から顔を出していた。
「……っと!カイじゃん!ぃよっ!」
あたしのリボンを掴んだまま、平野くんが手を上げる。
軽そうな、親しそうな挨拶。
……この二人、知り合い?
助けてくれる脈はないな、と悟った。
「……圭太、オマエうるさい」
飯島くんはダルそうに軽く首をまわして、平野くんを睨む。
その目が殺気立っていて、ゾクリと肌がざわめいた。
それは平野くんも同じだったらしく、彼も同じく顔をひきつらせる。
「おいおい、カイお前機嫌わりぃ?」
「寝てるとこ起こされたからね」
「――っ、短気……だなぁ、オマエは」
その言葉にふ、と飯島くんが鮮やかな笑みをのせる。
「うん、だから血祭りにあげられたくなかったらどっか行ってよ?」
微笑んだ顔は、明らかに怒りを含んでいて。
目が笑っていなかった。
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