08.*告白*

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飯島くんの伏せた目に、陰が落ちる。 前髪の隙間からほんの一瞬見えた、その心もとない陰の奥にある何かを探るように手を伸ばして、飯島くんの前髪をサラリと撫でた。 綺麗な目。 靄(もや)を帯びて、その奥はたしかに見にくいけれど、でも凛とした目。 イミテーションなんかじゃない。 飯島くんの、目。 「……必要、ありますか?」 「は?」 「飾る、必要」 あたしの質問に飯島くんは眉を寄せて、呆れたように息を吐いた。 「そりゃあね。 俺、好かれるのが仕事だし」 「……でも。 飾らなくても、飯島くんは好かれますよ」 「………」 言い切るあたしに飯島くんは一瞬目を見開いてあたしを見て、そしてすぐやんわりと微笑んだ。 「ありがと」 「……本気で言ってますよ?」 「うん、……だから、ありがと」 柔らかい声で飯島くんが繰り返す。 その毒のような甘さに目を細めると同時に、下からゆっくりと長い指が伸びてきてあたしの鼻をむにっ、と摘まんだ。 「いひゃっ、なにす……っ」 「ありがと」 あたしの抗議を飯島くんが遮る。 目を細めた甘い笑みに声が出ないあたしを見つめたまま、飯島くんが続けた。 「相変わらず、朝比奈さんは優しいね」
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