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声が、震えていた。
心臓が鳴り響く振動が体中に伝わって、指先すら震えている。
正直、ドキドキするとかそんな感情はもう消え失せていて。
どっちかっていうと、怖い。
顔を見ることなんかできるわけなかった。
できることならこの場から今すぐ逃げ出したい。
「……へぇ、そう」
長い沈黙のあと返ってきた、感情の読めない声。
顔を上げて彼を見ればその感情は読めるかも知れないのに。
今のあたしはそんな勇気なんか持ち合わせていない。
それどころか数秒前に自分が言った言葉にすら後悔の念ばかりが押し寄せる。
期待も、希望もないのになんてバカなことを言ってしまったんだろう。
もう取り消せるわけナイのに。
バカ、あたしホント、バカ。
こんなこと言ったら、飯島くんともう関われなくなっちゃうかもしれないのに。
「あのっ、今のは違うんですっ!
好きって、そうじゃなくて……っ!」
「だよね」
「……へ?」
あまりにあっさりと納得されて、拍子抜けしてしまった。
思わず顔をあげて飯島くんを見る。
「……理解してくれて、よかった。
朝比奈さん、誤解してるんじゃないかって思ってたから」
ニッコリ。
どんな女の子でもコロリと落ちるような、嘘くさい笑顔が顔を上げたあたしの視界に映っていた。
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