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「……誤解、って…」
何を。
さっきまで必死で否定していたくせに、こんなことは矛盾してる。
分かってるけど、そんな笑顔見せられたら苦しい。
イミテーションだと、分かっているから苦しい。
「……朝比奈さん、優しくて単純だから。
もしかして自分が俺のコト好きなんじゃないかって、誤解してるかなって思ってたんだよね」
「……っ」
……誤解、ってなに。
誤解なんかじゃないよ。
ソファの背もたれに頬杖をついてあたしを見る目。
愛しくて、あたしをどこまでも落としていく目。
この目があたしを混乱させる。
さっきまで飯島くんに告白をしたこと、後悔していた。
ほんの一瞬が、ものすごく長く感じるほど。
だけど今、それを否定したことを後悔している。
あたしは、こんな目を飯島くんにさせたかったわけじゃない。
飯島くんが、好きで。離れたくなくて。
居なくなって欲しくないだけ。
それがかなうためなら嘘をつくよ。
好きじゃないって幾度でも言う。
飯島くんがあたしのそばに居てくれるなら。
だけど、
それの代償が飯島くんの嘘つきな顔ならそれは重すぎる。
「……誤解、なんかじゃないです…っ!
……好き、です…っ!」
ぎゅっ、と服の裾を爪が食い込むほど握って、もうほとんど泣き声になったまま絞り出したあたしの情けない告白。
「好き、なんです……っ!」
これでもし、ふられてすべて本当に終わってしまっても。
飯島くんにあたしの想いが善意や同情で来てるわけじゃないって伝えたい。
飯島くんがどれだけ自分を嫌いでも、あたしは好きでしょうがないことを伝えたい。
飯島くんを見ている人がここにいること、知って欲しい。
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