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「だから、どうしても信じられない。
朝比奈さんは、優しいから俺の為に好きになってくれてるんじゃないかって、」
「違います……っ!」
「うん、分かってる。
嘘なんかついてないって。
でも、気づかないってコトもあるでしょ、あんた異常なほど純粋だから。
例え、それが同情からくる恋情だったとしてもあんたは区別もつかない。
本物の恋なのか同情なのか」
飯島くんの言っている口調はあくまで冷静さがどこか宿っていた。
必死なあたしとは違ってどこかいつも通りの冷めた感じが残っていた。
子供を言い聞かせてあやすような口調。
それは間違ってるよ、とでも言いたげな。
あたしの気持ちは誰がどう見ても恋だ、と証明できる術があればいい。
その証明さえみつけることができれば、何かが変わっていくかも知れないのに。
ギシッ、と軋むソファの音と共に両膝をたてて顔を埋めた。
この埋めようもない、今まで生きてきた過程でできあがる差をどうにかする術も見つからないから泣くことしかできない。
どうしてこんなにも無力でしかいられないんだろう。
好きな人の役に立つことも出来ないんだろう。
「………飯島くん。」
「………ん?」
「……好き、です」
「………」
伝える術もしらない。
飯島くんの気持ちを酌んであげることすらできない。
だから、
「……だから、見てます、ずっと。
ずっと、あたしは好きです……」
やっぱりまた、ここに戻ってくるんだ。
まだ出会う前からずっと送っていたあのメールのように。
押しつけるしか知らない、恋の示し方。
今度は、岳先輩の後ろに隠れた飯島くんではなくて、その本物の飯島くんに何度も何度も。
はじめから、あたしはずっとこの想いを飯島くんだけに捧げているのだから。
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