08.*告白*

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「……」 バタン、と閉まったホテルの一室のドア。 ドアが閉まる寸前、後ろ髪引かれるように振り返った朝比奈さんの横顔が頭から離れなかった。 泣きそうな、それでも俺に必死な横顔。 そんな顔で、同情してないって言い切るんだから朝比奈さんはすごい。 ソファから起き上がって、ドサッとベッドに倒れ込む。 枕からは、ホテルの匂いがした。 「……ねー、もう隠れてなくていーよ」 顔を枕から離さずに、そう言うとシャッとカーテンを開く音が聞こえた。 「……バレた?」 「当たり前でしょ」 「……つまんねーの」 チッ、と舌打ち一瞬。 ゆっくりと顔をあげると、久々に見た我が師匠がペロリ、と舌を出して俺の鞄を漁っていた。 「……あった、あった。 コレコレ」 「なに、やってんの」 「あー? そりゃ、オマエ。飴だよ飴。 オマエ糖尿病だから、随時持ち歩ってるもんな。」 「糖尿病じゃないから。 なに、嘘言ってんの」 悪びれもなく、歯を見せて笑う我が師匠。 久々に会ったっていうのに挨拶もなし。 そういうとこは何ら変わらない、俺の一番上の兄貴、飯島 空(いいじま そら)はポイッとオレンジの飴玉を口の中に放り込んだ。
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