08.*告白*

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「……っ、そういう意味じゃ……」 「じゃあ、どういう意味だっていうの」 俺の言葉に一瞬空がたじろいだ。 ベッドの軋む音が部屋に響く。 空に悪気がないことくらい分かっている。 俺のコトを思って言っていることだということも知っている。 だけど、何かとてつもなく言葉足らずで、陳腐に感じる。 朝比奈さんの「好き」って言葉も全部、俺にとってはものすごく安っぽく聞こえる。 ソファに座ったまま、片手で顔を覆った。 頭を落とすと同時に髪がカーテンのように俺を隠す。 「大事なんだよ」 顔を覆う手に力が入った。 悔しさのような、熱い感情が身体を走ってどうしてか泣きそうな気持ちになる。 「大事だから、傷つけたくない。 でも好きだから、一度手に入れたら離したくない」 そばに居て欲しい。もっとずっと傍に。 俺が普通の家で生まれて、普通の家で生きていたのならきっと迷わず…ってどうしても、そんな仮定法でしか表せない妄想を頭の中で繰り広げるほどに。 「やってみればって、何それ。 どうしてそんなことが言えるの」 あぁ、言えるのか。 空なら言えるのか。 絶対禁句な言葉が喉元まで出かかって、どうにか狂いそうな俺の理性がそれを止めた。 悔しい、とも違う。悲しい、じゃない。 この沸き立つような痛みをなんて呼ぶのだろう。
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