08.*告白*

8/11
前へ
/675ページ
次へ
朝比奈さんに告白された時も一瞬こんな感情に襲われた。 俺の中の何かが消し飛ぶような衝動。 全部かなぐり捨てて、ただ前で好きだ、と必死に伝える女の子を抱きしめたい獣のような感情。 叫ぶように訴える、俺の理性。 初めて、この感情を顔に出さない術を身につけた俺に感謝した。 あくまで冷静沈着。 微動だにしない、感情。 どんな時も嘘つきでいられる、顔。 「……空は、十分経験済みだと思うけど」 はっ、と荒くなった息を吐き出して告げる。 いつのまにか冷や汗が出ていた。 身体がダルイ。 ソファに思いっきり身体を投げて横になった。 「……俺らってさ、恋愛をしても最後は滅びる運命だよね」 「……」 空は黙ったままだった。 あまり触れて欲しくないことは分かっている。 「……岳はたまたま婚約者が杏奈だった。 たまたま自分が好きな人だった。」 でもね、と短く言って続ける。 「……俺は絶対結婚相手、朝比奈さんじゃないんだよね」
/675ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2485人が本棚に入れています
本棚に追加