08.*告白*

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「……なんか、経験者は語るってヤツだよね、これ」 無駄に言葉に重みを感じで空を見ると、やつはニヤッと笑った。 「おー、いいだろ。 俺は好きな女と結婚したんだから」 「そのかわり、飯島家から勘当されたけどね」 「嫌味だな、オイ」 ハハッと笑う空。 俺の言葉を気にはしていないらしい。 というか、本当に幸せだから何とも思ってないっていうのが正しいと思う。 空は、何年か前に飯島家から勘当された。 好きな女ができたから結婚したい、ってただそれだけで。 最有力次期社長候補だっただけに騒ぎはでかくて、空が取り締まっていた営業部も大混乱になった。 しかも被害はそれだけでは収まらなくて、有力株主の営業がいなくなったことにより、株主の怒りを買い株価が落ちた。 それによって営業は空の分の穴埋めをするために俺は女を落とす手段に出るように親父から命じられて、現在に至る。 まだ完全に復帰はしていない。 でもそれでも何とかやっと、少しずつ回復してきた。 自己中心的だ。 わがままだ。 世論はそう言ったけれども、空はそういう人間じゃない。 昔から面倒見もよくて、親父にも好かれていた。 だから、理由が見つからない。 空が勘当されてまで、その女を選んだ理由が。
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