09.*偽悪*

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入学式とか進級とかは桜のイメージがあるけど、基本的には葉桜のことが多い。 まだ、クラスの目標とかも貼られてない落ち着かない教室の窓から見ながら、そう思った。 「進級おめでとう。 ついに高校三年。気を引き締めて受験生活を送っていけよ。」 先生の言葉に、うぇー、とかいう抵抗の返事がちらほら上がる。 「飯島ー、お前も初っぱなからダルそうに机に突っ伏してんなよー」 「………はいはい」 ガタン、と机が揺れた音が真後ろからした。 ……好きって言って数ヶ月。 虚しいぐらいに何も変わらない日常。 飯島くんは話しかければ答えてくれるけど、電車とかはやっぱり一緒じゃなくて。 好きって、時々言ってるけど相変わらず「ふーん」で終わり。 岳先輩のメール打ってたとは思いがたいくらいの冷たさ。 変わらない。 飯島くんも、あたしも。 変わったことと言えば、杏奈先輩と岳先輩が卒業してしまったくらい。 寧ろ、相談相手が減ってしまって益々寂しいくらいだ。
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