09.*偽悪*

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「あー、そうだ。 あと、うちのクラス新しく生徒入るから」 ざわっ、とクラスが騒がしくなった。 転校生、なんて高校じゃ正直珍しい。 編入試験難しいし。 しかも転校生の噂なんて、まるでゼロだったから正直驚いた。 窓から教室の前扉のとこに視線をうつすと、ガラガラと扉が開いてひょっこりと顔が覗いた。 ……あ、女の子…… 「先生っ、もう入ってもいーの!?私」 あたしの心の声に覆い被さるくらい、パワフルな声でその子が言って、先生はたじろぎながら頷いた。 あたしもピックリ。 「うわー、緊張してます、今私! ごめんなさいっ、声上ずってるかも。 心臓がもうバクバクで!」 首の後ろをポリポリ掻きながら、女の子はエヘヘっと笑って入ってきた。 教室はしんっ、としたまま女の子を見る。 「あ、すみません、自己紹介もせずに。 神崎 愛咲(かんざき あさき)って言います。 えーっと、好きなのは寝ることと喋ることで嫌いなのは、面倒なこと! それからー……ん? あと何がある?」 「さーな」 話をふられた先生は、呆れたような、でもどこか可愛がっているような素振りで神崎さんの頭を撫でた。
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