09.*偽悪*

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「……はぁあっ、私、これ絶対失敗してるよね……。 みんなドン引きだよね」 「そういうことを言うから、ドン引きなんだよ」 先生はズバッ、と本当のことを言ってのける。 もう少し遠慮してもいいんじゃないかなってくらい。 でも、しゅんみりと肩を落としている転校生を見ると悪い人って感じはなかった。 すごく正直な人なだけで。 「……じゃあ、神崎。 席は朝比奈の隣で。 朝比奈ー、手あげて」 「えっ……、あっ、はいっ」 慌てて手をあげてから、初めて隣の席が空席だったことに気づいた。 窓の外と飯島くんにしか神経行ってないなんて、バカだ。あたし。 「朝比奈さんって言うんだ。 神崎です、よろしくねっ! あ、呼び方は愛咲でいいよー。 朝比奈さん名前は?」 「えっ……、あ、風花です!あと、こ、こちらこそっ、よろしくっ」 新しい机に鞄を置きながらにっこり笑う愛咲ちゃん。 緊張のあまり、勢いよく頭を下げるとゴンッと机に当たった。 「いたたっ」 「ふはっ、風花ちゃん、可愛いーっ」 くしゃっ、と顔に思いきり笑みを浮かべて、愛咲ちゃんが笑う。 特別すごく美人、とかではないのかもしれないけど、笑った顔が可愛いなって素直に思った。
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