09.*偽悪*

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「保健室、行こうか?」 にっこり。 満面の笑みを浮かべて言う飯島くん。 あたしはそれにビックリして、ガタッと思わず椅子を引いた。 「いやいやいやっ! そ、そんな大袈裟なっ!」 「女の子が、顔に傷つくったら、大変でしょ?」 「そんな、大層な顔持ってませんからっ! 大丈夫ですっ」 「そんなことはないんじゃない?」 机に肘をついて、その手に顎を乗せながらにっこり笑う飯島くん。 あたしのこと、好きじゃないのにこんなフォローはなんか痛い。 心の中でほんの少し毒づいたことを思いながら、ため息と化して吐き出した。 そのため息が、愛咲ちゃんと被って思わず顔を上げて愛咲ちゃんを見る。 目が合った瞬間、愛咲ちゃんが飯島くんを睨みながら口を開いた。 「行くことないよ。風花ちゃん。 そいつ顔が良くても、女ぐせ悪いから。 保健室、なんて風花ちゃんみたいな可愛い子が行っちゃダメ」 「………」 飯島くんが目を細めた。 沈黙が流れる。 ……あぁ、この子飯島くんが営業部だって知ってるな、とその反応を見ながら何となく思った。
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