09.*偽悪*

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飯島くんは、あたしの中を掻き乱す台風みたいだ。 飯島くんがいるときは、ひどく感情の変化は激しいし、落ち着きなんて概念すら飛びそうなほど皆無になる。 去っていけば、いなくなって落ち着くのに何故かもの悲しい。 廊下の窓から少し強めの風が吹き付けて、あたしの髪を揺らした。 靡く前髪を押さえながら、保健室にトボトボと歩く。 ずるい人だ。 本当に。 見えない痕だけ、あたしに焼き付けていく。 ヒリヒリと大して痛くもないはずのおでこが痛んだ。 高ぶる感情をぶつけるように、早足で保健室に急ぐ。 卒業まで、あと一年。 こんなんで飯島くんがいなくなってしまったら、どうするんだろう。 こんなに心持っていかれて、こんなに血を流してもまだ好きなのに。 会えなくなったら、なんて。 考えたくない。
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