09.*偽悪*

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「風花ぁー、ボール行ったよーっ」 「はーいっ」 4限目。 体育。 女子はドッチボール、男子は持久走という何とも不公平な時間の中、男子は校庭から飛び出していて、ここには女子しかいなかった。 あちこちから、高めの声が響く。 ゆるーい体育の時間。 いっちゃんは敵側のチームで外野をやりながら、はぁっ、とため息をついた。 「あー、お腹すいたー」 「ハハ、4限目の体育はキツイよね」 いっちゃんのぼやきに答えたのは、あたしではなく愛咲ちゃん。 保健室から帰った後も、愛咲ちゃんは何事もなかったかのように、普通に接してくれていた。 「そーそー。 まあ、お腹の音が聞こえないのはプラスかな」 「そーね。 テスト中とか悪夢だよ、ホント」 お腹の音は、誰でも一度は悩むもの。 こんな他愛のない会話が、ゆるいドッチボールを暖かく盛り上げた。
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