09.*偽悪*

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「男子、三キロでしょー? 走るの。 可哀想だよねー」 「しかも4時間目とか。 食欲無くすね」 アハハ、と響く笑い声。 ドッチボールをする女子全体で話していると、「あ」と一人が声をあげた。 「うわ、男子もう帰ってきた」 「えっ、まだ10分くらいじゃない?」 「まあ、トップはそのくらいじゃ……。 ってありゃ。 カイ君独占じゃん」 その声にハッと男子が帰ってくるトラックを振り返る。 トラックを1周してゴールに辿り着く今回のマラソンコース。 二位の人はまだ見えないくらいなのに、飯島くんはティシャツの袖で無造作に汗を拭いながら走っていた。 「ってか珍しー。 カイ君ちゃんと走ってるよ」 「真っ先にサボると思った」 アハハ、とまた女の子たちが笑う。 そんな普通の会話みたいなものなのに、飯島くんの影響力を直に感じた。 ドッチボール。 飯島くんがマラソンから帰ってきたことで止まってる。 きっと他の人じゃ、こんな風にはならなかった。 飯島くんの魅力に惹かれるのは、当たり前だけどあたしだけじゃないんだ。
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