09.*偽悪*

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「何であんなにモテるかね。 あの男」 腰に片手を置いた愛咲ちゃんが、鼻を鳴らして飯島くんを目で追う。 逆にどこにそんなに嫌う要素があるんだってあたしは思うけれど。 「やっぱり顔かな。 生まれながらの才能だよね」 あくまで皮肉たっぷりの口調で愛咲ちゃんが、呟いた。 そういう中飯島くんは着々とゴールテープまでの距離を詰めていく。 そしてそのまま、汗を飛ばすように首を振ってゴールした。 日光に照らされ、ハッキリと茶色に輝く髪が揺れる。 「……違うと思います」 「え?」 その様子から、目を離さないままあたしは続けた。 「何て言うか、隠しきれない花みたいなのを持ってるんです。 理由なんてないのに、目で追う。 どうしてか、信用できる。 好き、嫌い関係ない、ただの本能と直感で、そう思う。 そういうの、なんか全部持ってるんですよ」 所詮、人だって動物なんだなって思う。 野性的に、もう絶対拒否な人。 理由もなしに惹かれる人。 飯島くんは、後者の代表みたいな人なんだ。 少なくても、あたしにとっては。
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