09.*偽悪*

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「……そんなもんかなぁ。 私はアイツに対して警戒サイレンしか鳴ってない」 イマイチ納得できない様子の愛咲ちゃんに目をやる。 嘘なんて微塵もついていないのがよく分かる目だった。 「愛咲ちゃ――」 「あぶないっ!」 「………え?」 言われて振り返った瞬間、視界に飛び込んできた巨大なボール。 ……あ、そっか。 今、試合中だった……。 スローで進むような感覚の中、一瞬思ったと同時に、あたしの顔面にボールが直撃した。 「―――っ、」 声にならない悲鳴をあげて、その場に座り込む。 ヒリヒリと顔中が痛んだ。 熱さすら感じる。 「風花ちゃん、大丈夫っ!?」 「ハ、ハハ……、へ、平気……」 言いながらも顔をあげられないから、説得力はゼロ。 だけど、どんな顔してるのかも分からないから、顔を上げづらかった。 ……あぁ。 今日、あたし厄日かもしれない。
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