09.*偽悪*

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* * * 「風花ちゃんってドジなの?」 「い、いや……。 そんなことは……ない、はず……」 イマイチ自信の持てない曖昧な返事のまま愛咲ちゃんと保健室までの道を歩く。 本日、二度目。 先生も、絶対呆れてるだろうな。 そうため息をつきながら、ドアを開けようと手を伸ばした時、中から声が聞こえた。 「好きです」 「―――っ、」 ドアノブにかけていた手がピタリと止まる。 愛咲ちゃんを見上げると、彼女にも聞こえた用で、こっちを見て目配せしていた。 「……俺を?」 聞き慣れた声が返事として耳に届く。 今度は違う意味で硬直した。 ……飯島くんの、声、だ。 思わずぎゅっと手を握った。 きっと今告白してる女の子もあたしと同じ気持ちなんだろうけど。 だけど、願うことは真逆。 ……断って。 飯島くん。
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