09.*偽悪*

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「えっ……え? それって……、どういう……」 「そのままだよ」 愛咲ちゃんはそう言って、何の躊躇もなくガラッと保健室のドアを開けた。 窓から直接、日の光が飛び込んでくる。 「……ハ、あんたら、いつからいたの?」 光の中、飯島くんの声だけが聞こえた。 逆光で、姿がよく見えない。 「告白現場あたりからかな」 「趣味悪いね。 覗き見?」 「まさか。 保健室に来ただけだよ」 ポンポンと飛び交う飯島くんと愛咲ちゃんの声。 目が慣れてくると、飯島くんの隣に可愛らしい、こじんまりとした女の子が座っているのが分かった。 居心地悪そうに、肩をすぼめている。 なんか似てるなって、瞬間的に思った。 「あ、あのっ……。 あたしは、これで……」 「あぁ、うん」 そっけない、飯島くんの返事。 それに女の子はぺこりと一礼して、逃げるように保健室を去った。
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