09.*偽悪*

24/40
前へ
/675ページ
次へ
「昼寝ーっ? 今、授業中なのに?」 「大丈夫。 マラソン一位取ったら、保健室で寝てていいって言われたから」 飄々とそう返事を返して、飯島くんは寝返りを打つ。 その目が一瞬、チラッとあたしを見た。 「それで、何で告白されてんのよ」 「さぁね。 たまたま」 「たまたまって、そんなわけ…」 「どうでもいいよ。そんなこと」 飯島くんはほとんど無理矢理愛咲ちゃんとの会話を終了させて、ゆっくりと長椅子から起き上がった。 そして、そのまま冷凍庫の前にしゃがみこんで、その扉を開く。 中から取り出したのは、製氷トレーだった。 「え…、飯島くん、それ何に使うんですか?」 「……は?」 あたしの質問に飯島くんは、面食らったような顔をして、 「あんたの顔を冷やすのに使うんだけど」 額を押さえて、そう言った。 「……あっ、あぁっ! あ、ありがとう、ございます…!」 「何で忘れてんの」 アホだね。 そう続きそうな口調で言いながら、飯島くんは製氷トレーから氷を何個か取り出して、ビニール袋の中に入れた。
/675ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2485人が本棚に入れています
本棚に追加