09.*偽悪*

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―――時々。 ほんとに一瞬、こんな時。 もしかして、飯島くんもあたしを好きなんじゃないかって一瞬だけ頭を横切る時がある。 自惚れてるって分かってるし、飯島くんに言ったらきっと「自意識過剰だね」ってスパッと一蹴されることも重々承知しているけど。 だけど……。 「ほら、そういう顔。」 愛咲ちゃんが、保健室にある長椅子に座りながら人差し指をベッドの上の飯島くんに向ける。 飯島くんはうつ伏せに寝転がったまま、腕の中に顔を半分隠した状態で首をかしげた。 「なに? 今、俺変な顔してた?」 「してたよ。 っていうかね、思いっきりデレデレしてるように見えた」 「………してないから」 はぁっ、と飯島くんは盛大にため息を吐き出すけど、耳のあたりがほんの少し赤い。 ちょっと眉を寄せた表情も、いつもの飯島くんとは違う表情に見えて。 「ふふっ」 口を手の甲で押さえるも、思いきり笑ってしまった。
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