09.*偽悪*

32/40
前へ
/675ページ
次へ
「……」 ヤバ、と思った時にはもう手遅れ。 飯島くんが鋭い視線であたしを咎めていた。 「やっ……、あの、ね? ほら、何て言うか……」 「朝比奈さん、退場」 「えぇっ」 ベッドから起き上がって、後ろからあたしの肩を押す飯島くん。 まさか冗談だろうと思っていたのに、 「ほら、授業サボらない」 飯島くんにだけは言われたくない台詞で本当に保健室の外に追い出されてしまった。 「………えぇ…?」 ポツン、と一人残された日当たりの悪い、寒い廊下にあたしの声だけが響く。 無理矢理追い出された感が満載で正直納得がいかない気持ちが大きかった。 しかも、保健室の中には愛咲ちゃんが残っている。 このまま、「はい。そうですか」って帰れるほどあたしの神経は図太くない。 結局その場をあたしは離れることはできなくて。 音をたてないように保健室のドアを背もたれにして寒い廊下にしゃがみ込んだ。
/675ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2485人が本棚に入れています
本棚に追加