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"婚約"なんて、そんな聞き慣れない単語。
飯島くんと愛咲ちゃんの間柄で何で出てくるんだろう。
嫌な予感で胸がいっぱいになるのに、それでも保健室のドアの傍からは離れられなかった。
「……なんだ、そこまで知ってたんだ」
ふぅ、となんだかガッカリした声を発する愛咲ちゃん。
それに比べて飯島くんの声は冷めていた。
「そりゃあね。
顔合わせた時から俺のことがキライなオーラすげぇ出てたし。」
「そりゃあ、出すでしょう!
あたし、最初に親に紹介された時『営業の女好き』って言われたんだよ!?
誤解しないヒトがどこの世界にいるっていうのよ!」
「だから、あながち間違っているとは言えないよ。それ。
嘘じゃないから」
「………」
ポンポン、と飛び交っていた会話がふいにやむ。
そして沈黙の後、
「…女好き、だけは嘘でしょ」
と、さっきよりずっと弱々しい声で愛咲ちゃんが反論した。
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