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「……分かんないよ、そんなの」
「分かるよ。
女好きだったら、ふったりしない」
静かな声のまま、それでも飯島くんの天の邪鬼な言葉に即答する愛咲ちゃん。
二人にしては珍しい妙な空気の沈黙が続いたあと、それをぶち壊すように「あぁーっっ」と愛咲ちゃんが叫んだ。
「もうっ、何コレ!
ホント、こんなはずじゃなかったのにっ!」
「……俺だって想定外だよ」
「あたしの方がずっと想定外よ!
恋愛の想定外って破壊力半端ないっ!」
「あぁ、ギャップってやつ?」
「そう、それ!
…ってそうじゃなくてさぁっ!」
バンッ、と机を叩いたような大きな音がした。
その振動であたしが背もたれにしていた保健室のドアも揺れる。
「…だって、…あたしどうしたらいいのよ」
「……」
「どうしよう。
これ、"好き"かな。
好きだったらどうしよう」
愛咲ちゃんの声がほんの少しだけ泣き声になってるように聞こえた。
言葉ひとつひとつの重みが胸に刺さる。
もてあまして行き場のない感情。
同じモノを持っているから、痛いほどよく分かってしまった。
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