09.*偽悪*

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「だってカイ、フるんでしょ。 あたしが好きだって言ったら」 「うん」 「即答すんなっ! あんたホントに営業かっ!」 「営業だから、即答するんでしょ」 「あほっ! そこは嘘でも好きだっていうの!」 「言わないよ。 好きじゃないんだから」 ハッキリ言い切った飯島くんの言葉に、愛咲ちゃんが詰まる。 そして、 「……ハハッ、あーあ。もう。 ホント。 こんな営業、クズだ、クズ」 ムリヤリ笑ってるのが声だけで分かるくらい、苦しそうにそう言った。 「……ごめんな、愛咲」 「……なに、終了みたいに言ってんの。 あたしは基本心には忠実なの」 「うん、そこの部分は俺たち似てるみたいだね」 「……うん、だから。 あたし、諦めたくない。 カイに好きな人が居ても、あたしを好きになって欲しい」 「……」 飯島くんは一瞬、黙った。 カツン、と何か軽いモノが落ちたような音が響く。 その音が沈黙を割ったと同時に飯島くんがハッキリと言い切った。 「それはないよ。 この先、一生」
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