09.*偽悪*

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『先輩、あたし岳先輩が好きです』 光も見えない、そのただの暗闇の中。 そこに引きずり込まれた光を見た。 岳に捕まるなんてホント馬鹿だ。 こんなに綺麗で、こんなに切ない。 その感情をあんなヤツにあげるなんて本当に馬鹿だ。 心の中で罵りながらメールを返した。 わざとそっけなく嫌われるような態度を取った。 早く離れて。早く逃げて。 それでもその眩しさの所為で「YES,NO」の返事はどうしてもできない。 騙してるという背徳感。 それでもメールが来る度感じる妙な高揚感。 俺に向けられていないと知っては意気阻喪する。 そんな日々が半年以上続いた頃にはメールだけじゃ我慢できなくなっていた。 もっと見たい。 もっと知りたい。 手探りで見つけた彼女を見ることの出来る方法はただ一つ。 窓際一番前。 あの、特等席。
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