09.*偽悪*

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「……まぁ…、気分的な。 愛咲、キライじゃないし」 「そういう問題じゃないでしょ! 何でそんな展開になってるのよ!? 愛咲ちゃん、あんたのことキライだったじゃない!」 「なんか好きになったんだって。 …つーか、今夜中だよ? さすがに非常識じゃない? 近所迷惑」 「近所に聞こえるほどこの家狭くないでしょーが」 「……」 あぁいえば、こういう。 その平行線。 この言い合いから逃れる術はないな、と頭を掻いた。 「ここで断ったって結果は変わらないでしょ。 どうせ誰かと結婚するんだから」 「だけど……っ!」 「あんたの言いたいことは分かるよ。 だけど、その場しのぎで断ったって後悔するに決まってる」 「………」 俺の言いたいことは分かってくれたらしい。 杏奈は口を噤(つぐ)んだ。 けれど、不服そうなふくれっ面は変わってない。 子供みたいだな、と眺めているとやがて杏奈は口を開いた。 「……でも、ほんとは、後悔してるでしょ?」 「……は?」 俺の話、ちゃんと聞いてた? 振り出しに戻るような発言に、顔をしかめて杏奈を見ると杏奈は伺うように俺を覗き込んできた。
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