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人生で何よりも大事な物。
守りきりたくて仕方ない物。
こんなに愛おしくて、こんなに大切なのに。
どうして一番うまく動いてはくれないんだろう。
俺の思うがまま、心の中だけでひっそりと暮らしてくれればいいのに。
獣みたいな自分の本能が邪魔をする。
本当は、朝比奈さんを俺の物にしたい。
朝比奈さんは俺以外の誰にも惚れて欲しくない。
これから先未来、ずっと俺に惚れて。
それで苦しんでくれればいい。
残酷で、自分勝手で、都合の良すぎる考え。
でも止まらない。
むしろ、いくら堤防を作ったところでそんなもの何の役にも立たないとばかりに飛び越えてやってくる。
可愛い、と一瞬頭の中で考えがよぎれば、いつのまにか抱き寄せている。
離せ、と理性が呟いたってそんなもの聞きやしない。
目眩がしそうなほどの甘い香り。
香水なんかじゃ出し得ない、朝比奈さん独特の。
近づけば、近づくほど虜になる。
「……奪いたい」
ギシッとベッドが軋む音が部屋中に響いた。
頬骨が音を鳴らすほどきつく歯を食いしばり、声を押し殺す。
だからこそ、俺とは思えないほど低い声が出た。
「朝比奈さんが、欲しい」
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