10.*悪事*

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朝の光がで飯島くんの色素の薄い髪が透けて見える。 携帯電話に視線を落とす、それだけの姿がすごく輝いて見えた。 きっとあたしの目の錯覚と、朝の所為だと思うけど。 「……あ」 ふと飯島くんが手にしている物に目をやる。 スマホ、じゃない。 イマドキちょっと古い気もするガラケー。 あたしと同じ。 『……この、携帯はある人専用』 前に飯島くんがそう言っていた。 あたしに苦しい現実を教えてくれたときに。 あの中に、あるのはあたしとのメールだけってことで……。 「………っ」 きゅっと口を強く結んだ。 嬉しいって感情が素直に血流にのって流れて体中染み渡る。 今、きっと。 飯島くんはほんの一瞬でも、あたしを思い出してくれているんだろう。 きっとこれだけは自惚れでも何でもない。 今、この一瞬だけは飯島くんの思考にあたしが入っている。 「………っ」 あぁ、嬉し泣きしそうだ。 本当に泣いてしまいそうだと思った。 たった、これだけ。 ただ彼の思考の中に入れている『今』という時間が何にも代え難いほど愛おしい。
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