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朝の光がで飯島くんの色素の薄い髪が透けて見える。
携帯電話に視線を落とす、それだけの姿がすごく輝いて見えた。
きっとあたしの目の錯覚と、朝の所為だと思うけど。
「……あ」
ふと飯島くんが手にしている物に目をやる。
スマホ、じゃない。
イマドキちょっと古い気もするガラケー。
あたしと同じ。
『……この、携帯はある人専用』
前に飯島くんがそう言っていた。
あたしに苦しい現実を教えてくれたときに。
あの中に、あるのはあたしとのメールだけってことで……。
「………っ」
きゅっと口を強く結んだ。
嬉しいって感情が素直に血流にのって流れて体中染み渡る。
今、きっと。
飯島くんはほんの一瞬でも、あたしを思い出してくれているんだろう。
きっとこれだけは自惚れでも何でもない。
今、この一瞬だけは飯島くんの思考にあたしが入っている。
「………っ」
あぁ、嬉し泣きしそうだ。
本当に泣いてしまいそうだと思った。
たった、これだけ。
ただ彼の思考の中に入れている『今』という時間が何にも代え難いほど愛おしい。
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