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「いっ…飯島くんっ……!」
「……」
人気のない、ホーム。
涙声にならないように気をつけながら飯島くんを呼ぶと、その顔がゆっくりとこちらを振り返った。
茶髪の髪が朝の光に溶けるように揺れて、その眩しさに目を細めた瞬間。
「……おはよ」
短い、でもくすぐったいほどの甘い音色を持った声があたしの耳を刺激した。
「お、…おはよう、ございます……」
思わず声が小さくなる。
頬の熱が上がっていることを自覚していたから足下に視線を落とした。
すると頭上から再び声がかかる。
「今日、早くない?」
「…あ、えっと……」
飯島くんに、会いたかったので。
きっとこれが言えれば満点だったのに、あたしの口は震えるだけでその言葉を刻まない。
微妙な沈黙が続くと、飯島くんは
「まぁ、言いたくないならいいけど」
と冷静に呟いて、さりげなく携帯をブレザーのポケットの中に仕舞った。
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