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「何が、『ほらー!』だよ。
明らかに朝比奈さん困ってるでしょ」
「困ってないよーっ!
…ん?いや、ちょっと…は、困ってる、か?
ごめんねー?風花ちゃん!」
「えっ…、ハハ。
そんなことない…よ」
ハハハ、と無意味なほどぎこちない笑みだけ繰り返して愛咲ちゃんを見る。
けど愛咲ちゃんはパッと顔を綻ばせて
「よかったーっ!」
と肩を揺すって笑った。
それにまた、あたしも笑みを返して、と他愛ない会話が続く。
愛咲ちゃんが来てから一気に花が咲いたようにブワッと駅のホームの空気が明るくなった気がした。
もうすぐ電車が来る時刻も迫っていたため、人も増えてくる。
「………」
チラッと愛咲ちゃんと飯島くんを盗み見る。
愛咲ちゃんは満面の笑顔。
飯島くんは、満面の笑顔…、とまではいかないかもしれないけれど。
それでも困ったような顔をしながらそれでもほんの少し口角が上がっていた。
「……」
これでいいんだ、って自分に言い聞かせる。
そうじゃないと、この場で泣き出してしまいそうだった。
でも、このままこんな風に二人が笑い合ってる中、一緒に電車に乗るのはさすがにキツイ。
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