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刻々と進む時間。
やがて、電車はあたしたちの駅のホームに到着して、人々が一斉に乗り降りする。
「うわ、来るの早っ!」
そう言って飯島くんの袖を引く愛咲ちゃん。
あたしにはだいぶ長い時間に感じたのに、愛咲ちゃんには短く感じたらしい。
…そうだよな。
好きな人とお喋りしてるときはあっという間だもんね。
嫉妬してる側に回るとこんなに長いんだな、と思いながら、電車に乗っていく二人を見送る。
すると、もうすっかり電車に乗り込んだ二人がこっちを振り返って不思議そうに首を傾げているのが目に入った。
「…風花ちゃん?
乗らないの?」
「…えっ?
あ、今――」
進もうと、足を伸ばそうとしてハッとした。
……嘘。
足が…、動かない……。
立ちすくんだ状態のあたしを見て、愛咲ちゃんが更に首を傾げる。
「風花ちゃん?
電車、出ちゃうよ?」
「う、うん……」
何でっ!?
気持ちだけが焦るのに、身体が言うことをきかない。
強ばって震えた身体が言うことをきかない。
この二人を二人きりになんかしたくない。
そんなことできない。
分かってるのに――!
こんなに仲の良い二人をこれ以上見て傷つくのがイヤだと、本能が泣き叫んでいる。
それがあたしの足のストッパーになって進まない。
発車を知らせる場違いなほど軽快な音楽がホームに流れた。
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