10.*悪事*

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「……」 「……収まりましたか」 「…まぁ、ね。 ってか朝比奈さん、なんでそんなに不服そうなの?」 「不服です。 人が真面目に話してるのに」 「あー…。 そうね、ごめんね」 「ごめんね、じゃ済まさないです」 「……」 微妙な、沈黙。 駅のホームで抱き合いながら。 すごく変な感じはするし羞恥心もないわけじゃないけど、正直そんなものどうでもよかった。 こんな風にぎゅっとしてくれる機会なんてほとんどない。 それに絶対の絶対に、一秒だって取りこぼしたくないから。 「……あたし、飯島くんが好きです」 「……」 「証なんて、まだ見つかってないけど。 だけど…。 こんな風に、ぎゅっとしていられるのが嬉しいです」 「……」 「……ほ、ほんとはキス、とかも…」 「ストップ。」 恐ろしく恥ずかしいことを言おうとした所で飯島くんに止められた。 その瞬間に、ものすごく恥ずかしいことを言おうとしてたんだってことに気づいて熱がぶわっと増殖する。 「……何、照れてるの?」 「だだだ、だって……っ!」 「……ん?」 ゆっくりと身体を離されて、顔を覗き込まれる。 その顔に浮かぶのは、余裕めいた笑み。 「……っ」 あぁ、だからこの人はずるい。
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