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「はい、抱っこタイム終わり。
お疲れ様でした」
パッ、と身体を離されてあたしを覗き込んでいた顔も引く。
それにゆっくりと顔を上げると飯島くんの背中だけが見えた。
その肩越しに朝陽がキラキラと光っていて眩しい。
「い、飯島くん……」
「ん…?」
その背中に声をかけると、飯島くんはゆっくりと首だけ振り返った。
その少し細めた目に心臓が高鳴る。
「ま、まだ、あたしの好きは、信じられませんか…?」
「……」
「まだ、ダメですか……?」
「……」
飯島くんは、困ったようにほんの少しだけ笑ってゆっくりとこちらを振り向いた。
「……朝比奈さんは、俺には勿体ないよ」
「……え…?」
「朝比奈さんは、俺が求めてる人としての理想像をすべてクリアしてる。
俺が欲しかった物。本当は、手にしたかった物。
なくしたくなかった物、全部」
ふっ、と一瞬飯島くんが目を細めた。
その笑みが酷く自嘲的に見えて、声をかけようとするけれど飯島くんがそれを制すように言葉を刻んだ。
「だから、あんたには、俺以外の人と幸せになって欲しい」
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