10.*悪事*

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「…っ、ふ…」 「泣きすぎ」 ゆっくりと離れた唇はそう言って、あたしの頬にまたキスを落とす。 その現実が信じられなくて、目眩がした。 「…、しょっぱ」 そう言って自分の唇を舐める、飯島くん。 近すぎる距離と、涙があたしの視界の邪魔をする。 あぁ、あたし今。 きっとこの人に殺されても後悔なんかしない。 17年の人生で初めてそんなことを心の底から思った。 「……っ、好き、です…っ」 「……うん」 「せ、世界で一番…っ、大好きですっ…」 「…うん」 再び、磁石のように引き寄せられたあたしの身体。 隙間なく抱きしめられて、今このときが夢でないことを祈った。 「……好きだよ。朝比奈さん」 「……う、…」 「他には何もいらないくらいに」 ぎゅっとひらすら強く抱きすくめられた身体。 その体温から飯島くんの気持ちが手に取るように分かる。 そうか。 だから、みんなこんな風にギュッとするのか。 この酔いしれそうなほどの温かさに、生きていて初めて熱を伝え合うことの本当の意味を知った。
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