2484人が本棚に入れています
本棚に追加
「…っ、ふ…」
「泣きすぎ」
ゆっくりと離れた唇はそう言って、あたしの頬にまたキスを落とす。
その現実が信じられなくて、目眩がした。
「…、しょっぱ」
そう言って自分の唇を舐める、飯島くん。
近すぎる距離と、涙があたしの視界の邪魔をする。
あぁ、あたし今。
きっとこの人に殺されても後悔なんかしない。
17年の人生で初めてそんなことを心の底から思った。
「……っ、好き、です…っ」
「……うん」
「せ、世界で一番…っ、大好きですっ…」
「…うん」
再び、磁石のように引き寄せられたあたしの身体。
隙間なく抱きしめられて、今このときが夢でないことを祈った。
「……好きだよ。朝比奈さん」
「……う、…」
「他には何もいらないくらいに」
ぎゅっとひらすら強く抱きすくめられた身体。
その体温から飯島くんの気持ちが手に取るように分かる。
そうか。
だから、みんなこんな風にギュッとするのか。
この酔いしれそうなほどの温かさに、生きていて初めて熱を伝え合うことの本当の意味を知った。
最初のコメントを投稿しよう!