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「話、長くなるのもイヤだからさ。
率直に言うけど、俺愛咲と結婚するのやめるわ」
「……は?」
めんどくさそうだった父親の表情が俺の言葉を聞いた瞬間、みるみるうちに怒りを露わにした。
まぁ、そんなことは当たり前だけど予想済み。
対して驚くべきコトでもないから、見なかったことにして先を続ける。
「…好きな子、いるんだよね」
「……」
「まぁ、つまり。
あんたが追い出した空と同じってわけ」
「……」
眉間に更に皺を寄せて俺を睨む俺の親父。
元々錯覚眉だから、やたらと迫力があった。
これにビビって、へこへこしている秘書も少なくはない。
「……カイ。」
「ん?」
低い声。
唸るようなその声に、わざと軽い声で返すと、親父は半分脅すように俺を見上げた。
「お前は、空とは違って利口だろ。
判断も区別もつく。
それなのに、「恋」ごときで間違った道を歩くな。
宝の持ち腐れもいいところだ」
「……」
宝の持ち腐れ。
親父の言う『宝』とは、俺の容姿のことだ。
俺のことじゃない。
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