10.*悪事*

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「話、長くなるのもイヤだからさ。 率直に言うけど、俺愛咲と結婚するのやめるわ」 「……は?」 めんどくさそうだった父親の表情が俺の言葉を聞いた瞬間、みるみるうちに怒りを露わにした。 まぁ、そんなことは当たり前だけど予想済み。 対して驚くべきコトでもないから、見なかったことにして先を続ける。 「…好きな子、いるんだよね」 「……」 「まぁ、つまり。 あんたが追い出した空と同じってわけ」 「……」 眉間に更に皺を寄せて俺を睨む俺の親父。 元々錯覚眉だから、やたらと迫力があった。 これにビビって、へこへこしている秘書も少なくはない。 「……カイ。」 「ん?」 低い声。 唸るようなその声に、わざと軽い声で返すと、親父は半分脅すように俺を見上げた。 「お前は、空とは違って利口だろ。 判断も区別もつく。 それなのに、「恋」ごときで間違った道を歩くな。 宝の持ち腐れもいいところだ」 「……」 宝の持ち腐れ。 親父の言う『宝』とは、俺の容姿のことだ。 俺のことじゃない。
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