2484人が本棚に入れています
本棚に追加
「判断の正誤、ってさ。
結構いい加減だと思わない?」
「……なに?」
俺の言葉が意外だったのか、親父は眉をピクリと動かした。
俺は近くの椅子を引いてそれに腰掛ける。
「…正しいことって、何?
得する道? 平和な道?
それとも世間が評価する道?
どれが正しい選択なの」
「……ふん、そんなの決まってるだろ。
得する道だ」
「だったら俺にとっては彼女をとる方が得だよ。
愛咲よりも、会社よりも。」
「……」
「……」
…こんな風に、親父と対立したのは初めてかもしれない。
記憶を追いかけながら、ふとそんなことを思った。
責任と、秩序と、プレッシャー。
そして罪悪感。
これが俺をこの大きくて、小さな場所に閉じ込める。
だから、自分の外にある大事なものなんて考える余裕もなかった。
今、見えるものを守るのに必死で。
今、目の前で救いを請う者に必死で。
最初のコメントを投稿しよう!