10.*悪事*

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「判断の正誤、ってさ。 結構いい加減だと思わない?」 「……なに?」 俺の言葉が意外だったのか、親父は眉をピクリと動かした。 俺は近くの椅子を引いてそれに腰掛ける。 「…正しいことって、何? 得する道? 平和な道? それとも世間が評価する道? どれが正しい選択なの」 「……ふん、そんなの決まってるだろ。 得する道だ」 「だったら俺にとっては彼女をとる方が得だよ。 愛咲よりも、会社よりも。」 「……」 「……」 …こんな風に、親父と対立したのは初めてかもしれない。 記憶を追いかけながら、ふとそんなことを思った。 責任と、秩序と、プレッシャー。 そして罪悪感。 これが俺をこの大きくて、小さな場所に閉じ込める。 だから、自分の外にある大事なものなんて考える余裕もなかった。 今、見えるものを守るのに必死で。 今、目の前で救いを請う者に必死で。
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