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「風花っ!
もう八時なのに、いつまで寝てるのっ!」
ガバッ、とお母さんに布団をはぎ取られて見えたのは窓から差し込む眩しい朝日。
いつもより幾分増しに、それが輝いて見える理由は確かめるまでもない。
「……クマ、ひどい…」
鏡の前でシャコシャコと歯磨きをしながら、自分の寝不足の顔とにらめっこ。
可愛らしい綺麗な肌と美しい表情で飯島くんの前に立ちたかったのに、今日に限っては最悪だ。
…いや、可愛らしい肌も、美しい表情も持ち合わせてなんかいないけど。
それでも少なくても自分の中では最高の姿で会いたかった。
それなのに。
「風花っ!
呑気に歯磨きやってる場合じゃないわよ!遅刻!!」
「うわっ、あっ、はーいっ!」
髪の毛のブラッシングすらままならないまま出発。
もちろん髪を縛ることすらしてないおかげで、駅まで走ったからボサボサだし。
しかも、駅ではギリギリすぎて飯島くんには会えないし。
会いたい。会いたい。会いたい。
異常なまでに飯島くんを恋う気持ちだけが高まっていく。
ただその気持ちだけをバネにして、あたしは猛スピードで飯島くんと通った通学路を自転車こいで走った。
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