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学校のチャイムが鳴り響く廊下を急いで走ってガラッと教室の後ろのドアをあける。
それと同時に学校のチャイムが鳴り止んで、クラス中の視線があたしに集合した。
「……あ、…えっと…。
おは、ようございます…」
誰よりも突出して鋭い視線を向ける先生に小さく頭を下げる。
先生はそれを聞いた後、後頭部を掻きながら大きなため息を吐いた。
「……おはよう。朝比奈。
珍しいな、お前が遅刻だなんて」
「……すみません。
ちょっと、寝不足で……」
言ってから「しまった!」と心の中で思って慌てて口を塞ぐ。
チラッと飯島くんを見ると、飯島くんはいつも通り肘を机につき、その手の上に顎をのせてネコみたいに欠伸をしていた。
その視線は、あたしがいる廊下側とは反対の窓の向こう。
なんだ。 目、合わないや。
心のどこかでちょっとだけガッカリしながら、自分の席まで歩く。
そこに辿り着く道のりで飯島くんの席の隣を歩くから、そのとき心の中だけで「おはよ」と呟いた。
……うん、満足。
確実にこんなの一人芝居だって分かってるけど、それでもこの高揚感はどうしても抑制できなかった。
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