11.*本音*

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「おい、そこの居眠りヤロー。 堂々と寝るな、アホ飯島」 先生の視線があたしの後ろの席に注がれて、後ろの席から寝息が止む。 その代わりに 「……先生。俺、疲れてんの」 飯島くんの、柔らかい抑揚の声が聞こえてきた。 ……うわ、喋った…! ニヤける口元を両手で隠して必死で抑える。 声、飯島くんの声だ。 あたしの大好きな、大好きな飯島くんの声。 うわー、うわー!  なんかすごい感動がある! 客観的に見たらどう考えても変態みたいな人だという自覚はあるけれど、その妙な笑みは止まらない。 「…飯島、教科書72ページの三行目、読んでみろ」 「えー…」 「眠気覚ましだ! 読んどけ!」 「…えーっと…、長……。 You cannot make me change my mind just as you cannot make the sun turn buck. 」 「訳せ」 「……。 えーっと、『太陽を逆に回らせることが出来ないように、あなたは私の決心を変えさせることはできない』…かな」 「……あってることがムカツク。 じゃー、その言い換えの文。『no more』使って。 じゃあ、高山」 「えーと…」 問題が次の人に渡って、飯島くんの声が止む。 それも飯島くんにさして欲しかったなんて、飯島くんにバレたら殺されそうなことをほんの少し願ってしまった。
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