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「……えっ?」
その声に驚いてパッと顔をあげると、体育館倉庫についた、たった一つの窓から見慣れた顔。
飄々として無表情を崩さないまま飯島くんが続けた。
「…あんたの気配、中にいてもすごく伝わるんだよね」
「……えっ」
「だからね、そんなとこで葛藤してないでこっちにに来たら?」
「……っ」
ちょいちょい、と顔の前で揃えた指先を上下に動かし、「おいでおいで」をする飯島くん。
その顔に、ほんの少しだけ優しい笑みが浮かんでいるからどうしようもなく鼓動が高鳴った。
「いっ、行きます…!
ぜひ、行かせてください…っ!」
「ハハ。 気合いどんだけ」
ククッと声を殺して笑いながら飯島くんが窓から顔を引っ込める。
それに続くように、短い距離だと分かりつつも体育館倉庫入り口までダッシュした。
「おっ、おじゃましても、いいですか…?」
「…どうぞ。ご自由に」
スライド式のドアを開ける許可を貰ってそーっとドアを開ける。
窓からの光が差し込んで、その下。
茶色の髪をキラキラと光らせながら、跳び箱の上で右足だけ立て膝ついて、左足をぶらぶらさせる飯島くんが見えた。
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