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……焦らしてる、なんて。
あたしが言われる台詞じゃなかったな。
ドキドキとなる余裕のないあたしの心臓とは真逆に、飯島くんは表情一つ変えてない。
むしろ口元に浮かんでいるのは「余裕の笑み」。
焦らしてるのは飯島くんの方だ。
「……っずるい」
両手をぎゅーっと握ってそう呟くと飯島くんは不機嫌そうに眉を寄せた。
「…何で」
「……何でって…。
じ、自覚ナイなら天然モノですよ…っ!
あ、あたしのことドキドキさせ過ぎなんですよ!」
「……」
勢い付けすぎて、まるで飯島くんに抗議しているような言い方になってしまった。
飯島くんはそれに一瞬だけ沈黙を置いて、そして小さくため息を吐いた。
「…俺が風花をドキドキさせ過ぎなら、風花はどうなるの?」
「えっ…」
「ほら、すぐ顔を紅潮させて。
可愛いことしちゃって。
……焦らしすぎ」
「……っ」
驚いて目を見開くよりも早く、飯島くんはあたしの手首を掴んで半ば強引にあたしをその腕の中に閉じ込めた。
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