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「朝比奈さんって、よくそういうこと、まっすぐに言えるよね」
飯島くんの頬の赤みが引いてきた頃。
飯島くんは頬杖をつきながら、呆れたような目であたしを見下ろしてきた。
「…いや、恥ずかしいですよ?」
「うん。だから、普通は言えないんだよ」
「……え、でも。
言わなきゃ伝わらないじゃないですか」
「……分かってても言えないモノなんだけどね」
そう言って飯島くんは小さなため息を吐いた。
その顔を見上げながら、あたしは顔の前に一本、人差指を立てた。
「……じゃあ、実は言いたかったこともう一つ言ってもいいですか?」
「…ん? 何?
恥ずかしいことなの? それ」
「……若干。」
「………」
それを聞いて、ぐっ、とつまった飯島くんを見て、ふと笑みが漏れる。
そのまま流れに任せるように提案を出した。
「……今週の、土曜日。
会いたい、です」
「……、つまりデートがしたいってこと?」
「つまり、そういうことです」
「…ふーん」
飯島くんはあたしから視線をそらして、少し考えるような仕草を見せた後、ふと顔を上げて
「俺も一個、恥ずかしいこと言ってみてもいい?」
と左手で頬杖つきながら、あたしと同じように右手で一本の人差指をたててきた。
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