11.*本音*

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人の影もあまりない、四階の廊下。 少し早足で教室へ向かってドアに手をかけた時、その手を思わず止めた。 ドアについたガラス窓から見えた愛咲ちゃんの姿。 窓の光を浴びて、髪がキラキラと光っている。 その愛咲ちゃんの指先が触れている場所は、飯島くんの机だった。 「……っ」 光が一瞬、一部だけやたらと強く光って見えた。 その光の雫は、愛咲ちゃんの目から飯島くんの机へと落下する。 「……っく」 一瞬、聞こえた嗚咽と、鼻を啜る音。 飯島くんの机に触れていた指先が離れて、愛咲ちゃんの目元へと向かう。 「………っ」 心臓が、つぶれそうなほど痛かった。 こんなの同情だと分かっている。 そんなこと思われても、愛咲ちゃんが喜ばないことくらい知っている。 それでも、この胸の内にわき上がる感情は止められなかった。 『……好きだよ』 ついさっき飯島くんの口から聞いた言葉を思い出す。 嬉しくて、幸せで、この時間が大事で。 でもそれは、他の人の幸せを奪って初めて作られたものだった。
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