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『みんなで幸せになろう』
なんて、ただの物語の中だけでの話だ。
そんなことくらい分かっている。
誰だって、誰のことも傷つけずに幸せにはなりたい。
それでも、そんなことはどんなことでも不可能だ。
受験だって、受かる人がいれば落ちる人もいる。
商売だって、新しくお店を作ればお客様を取られて嘆くお店が出てくる。
みんな自分が生きるために必死で。
だからそのためにどうしても踏み台にしなくてはいけない人がいる。
つまり今ある幸せはすべてきっと、間接的だとしてもその分の不幸を背負ってる人がいるってことだ。
あたしにとっては飯島くんに「好き」って言って貰えることは夢みたいだった。
絶対に叶わないと思っていた。
それでも愛咲ちゃんにとってはこんなもの悪夢だ。
あたしがあんなに愛咲ちゃんに飯島くんを奪われてしまうのが怖かったように、愛咲ちゃんだって怖かったハズなんだ。
むしろ、現実になってしまって苦しいんだ。
「……っ」
ぎゅう、と歯を噛み締めた。
歯の奥が痛くなるくらいに、ぎゅっと。
ポタリと落ちる涙一粒、あれがあたしの幸せの代償だと分かっているから、逃げたりなんててしたくない。
目はそらさない。
あの涙は無駄じゃなかったと、思えるような恋にしたいと思った。
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