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部屋の一面についている折り戸を開けると、その中にはギッシリと俺の服が収納されている。
杏奈が「これが似合う、あれが似合う」と俺にかなりの量をプレゼントしてくれている所為もあるのか、服だけは大量にあった。
「……二日分、ねぇ」
俺はクローゼットの前にしゃがみ込み、頬杖をついてそれらを眺める。
悩んでいるのは他でもない、朝比奈さん……、もとい、風花とデートするときの服装。
七分丈のドレープカットソーを見ながらどうしようかと考えを巡らせていると突然バンッと大きな音を立ててドアが開いた。
「海! ちょっと聞いてよ!」
「やだ」
静かだった空間が一気に騒がしくなって、それに顔を顰めながら即答する。
振り向かなくても入ってきたのが誰かのことぐらいすぐに分かった。
俺の部屋を無遠慮に出入りするのは杏奈しかいない。
いや、むしろ他にもいたりしたらたまったもんじゃない。
「……あれ?
クローゼットの前で何してるの? 海」
俺の言葉を完全に無視して、杏奈がツカツカと俺の元によってくる。
そして、
「そのカットソーがどうかしたの?」
と俺のコトを覗き込んできた。
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