11.*本音*

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「別に。 何となく、だよ」 「何となくカットソーを手に取る時なんてないでしょうが。 教えなさい」 「………」 何で命令形。 ため息をつきながら、俺はゆっくりと立ち上がる。 そのままベッドに座るとギシッとベッドが軋む音がした。 「……じゃ、オヤスミ」 「こらこらこらーっ! 逃げるな、バカ者!」 「バカ者って、俺があんたに言いたいんだけど。 不法侵入者」 「弟の部屋にくらい無断で入ってもバチは当たらないでしょう」 「いや、おれがあてる」 ケラケラと笑っている杏奈を制裁するように近くにあった枕を投げる。 見事に杏奈の顔面に命中して、杏奈が小さく「痛っ」と声をあげた。 「ちょっと! 女の子の顔にぶつけるなんて、何事よ!」 「女の子の前に姉だから」 「その前に親友ね!」 「じゃあ、尚更ぶつけるかな」 近くにあったクッションを手に取ろうとした時、先程投げた枕が俺の顔面に向かって飛んできた。 間一髪で、身体を傾けて避ける。 「くっ……! 可愛くない……!」 「俺に当てようなんて百年早い」 手にしたクッションを杏奈に投げると、杏奈がそれをキャッチして、俺に投げる。 それと同時に俺は右手で下から上へ、掬うように枕を投げて左手でクッションを掴んだ。
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