11.*本音*

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「確かに高いかもね、テンション」 「え?」 思い当たる節はあるから否定はしない。 杏奈はそれが意外だったのか、首を傾げた。 「なんで? 何か良いことあったの?」 「あったよ。 何にも代え難いほど良いことが」 「……」 杏奈は大きめの目をパチクリとしばたかせた。 そして食い入るように俺を見てくる。 何となくその視線に居心地の悪さを感じて、少し顔を顰(しか)めた。 「……なに」 「え…、いや、だって。 あたし長く海と一緒にいるけど、こんな嬉しそうな海みたことないから」 「……嘘。 それはないよ。 俺、小学生辺りかなり幸せだったし」 「じゃあ、大きくなったからなのかな。 見慣れていないと思うのは。 笑うと結構あどけなく見えるんだね、海」 「……」 まっすぐにそう言われると、なんだか妙に照れる。 杏奈といい、風花といい。 どうしてこう、まっすぐに言える人が俺の周りには多いのだろう。 「……別に。 っていうか、それ褒め言葉なの?」 「褒め言葉だよ。 少なくても、海に関しては」 「………」 俺はそんなにいつも、ツンツンした態度を取っていただろうか。 いや、でも取っていたかも知れない。 ツンツンしているというよりは、冷めていると言った方が良いかもしれないけれど。
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