11.*本音*

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だから、『あどけない』なんて言葉は無縁だった。 むしろその逆の言葉が飛び交うくらい。 なのに、今『笑顔があどけない』なんて杏奈に言われている。 その事実が、なんだかくすぐったいような何かを俺にくれた。 「……風花のおかげかも」 「…え?」 俺の呟きに杏奈が首を傾げる。 そしてそのままさらに続けた。 「てか、あんた風花ちゃんのこと風花なんて呼んでたっけ!?」 言っている最中に事の重大さに気づいたのか後半にかけて杏奈の声のボリュームが増す。 相変わらず声がデカイ、と思いながら口を開いた。 「呼んでたよ、去年から」 「さらっと嘘つくな!」 「嘘ではないけどね」 岳の代わりだったっていうだけで。 心の中でそこだけ呟くと杏奈がさらに俺に噛みつくような勢いで声を張り上げた。 「ねぇ、どういうこと!? 風花ちゃんと何か進展したの!? 告白とかしちゃったの!?」 「………」 勢いに任せてまくし立ててる割に杏奈は鋭い。 ビンゴだったから、反論の余地はなく小さくため息を吐いた。 「…しちゃったっていうか、させられたっていうか…ね」 「なに!? どういうこと!?」 「あんたの言ってること、正しいって事だよ」 「えぇっ!! 嘘ぉっ!!!」 杏奈は両頬に手をあてて、俺をキラキラとした目で見てきた。 ……非常に、居心地悪いんだけど。
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